※2025年2月26日、欧州委員会によりオムニバス法案が提出され、NESRSの基礎となるESRS基準を改定予定。そのため一旦、こちらの一次草案は保留中。
EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)の持続可能性報告委員会(SRB)は、2026年6月までに正式採択予定の非EU企業向け持続可能性報告基準(NESRS)の第一次草案を承認しました。
この基準は、EU域外に本社を置きながらEU内で一定の事業規模を持つ企業に適用され、2028年度のデータに基づく開示が2029年1月1日から義務化されます。
- EU域外に本社を置き、EU規制市場に上場していない企業
- 過去2年間、会計年度において連続してEU圏内の純売上高がそれぞれ1億5000万ユーロ超の企業
- 大企業または上場中小企業であるEU子会社の最終親会社である企業
- 前会計年度の純売上高が4000万ユーロ超の支店を有する企業
承認された議論の中心は、EU向け販売に関連しない影響を開示対象から除外できる選択肢(Page 5>18A-18C)です。この選択肢により、9つのトピック基準で該当情報の開示が免除されますが、NESRS1および2、ならびに気候基準(NESRS E1)は対象外です。
一部のSRBメンバーは、この選択肢が複雑なバリューチェーンでの適用を困難にし、基準の公平性を損なう可能性があると批判しています。特に、EU域内外で異なる基準が適用されることで、グリーンウォッシングを助長する懸念が指摘されています。
これに対し新たに追加された条項では、EU向けの影響とそれ以外の区別が不明確な場合、グローバルレベルでの影響を報告することが求められると規定されています。さらに、EU外で製造された製品がEU内で販売される可能性がある場合、その影響も考慮する必要があると明示されました。
SRBの承認投票では、13名が賛成し、3名が留保意見を表明、4名が棄権しました。反対意見の中には全企業に同一の基準を適用すべきとの主張や、非EU企業がEU関連以外の影響を開示しない選択肢を持つことで基準全体の信頼性が低下する、という懸念が含まれています。
また、SRBは公募での議論を踏まえた修正に重点を置くことを確認。具体的には、リスクおよび機会に関する開示の除外、EU特有の参照を国際化する方向性、影響に対する財務情報の提供などが議論対象となります。この公募プロセスを通じ、企業が基準をどのように実施できるか、具体的な実例が提供される予定です。
EFRAG事務局はSRB承認を受けて「結論の根拠」を作成し、公募とともに公表する予定ですが、公募開始時期は欧州委員会が最終決定します。この基準は、「オムニバス簡素化パッケージ」同様に今後も透明性や公平性の確保をめぐる議論が続く見込みです。
今の状況から日本企業ができることとしては、
- 基準の動向把握および理解と適応準備
動向の把握と同時に自社の報告体制を引き続き評価していく必要があります。特にEU向け販売とそれ以外の影響を区別する場合のデータ収集やシステム整備が求められます。
- ステークホルダーや現地子会社との連携強化
グローバルなサプライチェーンや現地子会社との調整を引き続き強化し、必要なデータを収集する体制を早期から構築していくことが重要です。
- 透明性と公平性の確保
基準に則った開示が今後グリーンウォッシングとみなされないよう、開示および取り組み自体において信頼性を確保することが重要です。
※2025年2月26日、欧州委員会によりオムニバス法案が提出され、NESRSの基礎となるESRS基準を改定予定。そのため一旦、こちらの一次草案は保留中。
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