2023年7月31日、欧州委員会は「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」および「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」を正式に採択(Commission adoptionパラグラフ)しました。6月の修正案からの変更はほぼなく、段階的導入条項が加わり、これまで必須であった開示要件のいくつかは任意となりました。またESRS2の一般的な要求事項のみが、全ての企業に対して引き続き義務報告となっています。
6月の修正案については、こちらから。
欧州に現地法人、子会社、支社をお持ちの日本企業さまへ。今から準備を始めるための「CSRD/ESRS対策 早わかりハンドブック」を進呈いたします。ご希望の方はこちらから。
今後の動向
EFRAGから以下の情報が公表される予定です。
- ダブルマテリアリティ評価の実効ガイダンス
- バリューチェーンに関するガイダンス
- ESRSデータポイント表
また8月中には、IFRSとの相互運用性に関する協議を開き、双方の具体的なマッピング表を公開する予定です。
IFRS/ISSBとESRSの相互運用性については、こちらから。
欧州における上場・非上場中小企業について
今回の第一弾基準の採択を受けて、欧州における上場および非上場中小企業については、以下のような方向性としています。
まず上場中小企業は、2026年会計年度までは報告義務がなく、その後2年間のオプトアウトの可能性があります(対象範囲については、こちらから)。現在EFRAGは、今回のESRS第一弾フルセットよりも要求の緩やかな、上場中小企業向けの基準の草案を作成中です。
また非上場中小企業の中には、CSRDの対象にはなっていないものの、顧客や投資家、その他の利害関係者からサステナビリティ情報の要請を受ける可能性があります。
そこでEFRAGは、非上場中小企業が使用できる、より簡素な自主基準も開発しています。これらの自主基準は、非上場中小企業が効率的かつ適切な方法でサステナビリティ関連の要請に応えることを可能とし、持続可能な経済への移行への参加を促進するものでなければならない、としています。
委任法の解釈や具体的なデータポイントについてはこれから公表となりますが、公開されたESRSの内容と現時点の開示データと比較したり、ダブルマテリアリティ評価の準備を行うなどの取り組みを少しずつ始めることをお勧めいたします。
引き続きESRS基準の動向に注目していきます。
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